中世の建築/太田博太郎・署名/この本では主として大仏様と禅宗様とがいつ伝来しどのような発展をしたかを明らかにした/70図版

商品説明
東洋美術全史/松原三郎/一般教養書ではあるが同時に専門的にも進める予備知識となりしかも東洋美術研究の綜合的な観点に立てるよう編集した

1957年 357P 巻頭に献呈署名 部数は少なそうです。資料用にもいかがでしょうか。

あとがき」
日本建築史の勉強を一生の仕事にしようと思って大学に入った私は、毎年の夏休みのすべてを古建築の見学に費し た。各時代の建物は、どれもそれぞれのよさがあるけれども、なかでも私の心を捕えたのは、中世の建築であった。 「中世建築の面白さについては、服部勝吉氏の「日本古建築史」第三巻鎌倉之巻(大正十五年)の序文がよくこれを言 い表わしている。

日本古建築史を学んで、所謂鎌倉時代に至るや、曰はく和様、曰はく天竺様、曰はく唐様、曰はく折衷様と、多岐 多様に流れ赴く当時建築界の有様を知っては、軽い興味を憶へるのが常であらう。更に当時の遺構数多きを一々に 実見してゆくうち、或は雄偉に、或は軽妙に、或は厳粛に、当時の建築が示した高邁さに至っては漸然他を抽んでるものあるに驚き、まことに端倪すべからざる変化の裡に蔵されて、他時代の到底企て及ばざる活気の横溢せるに嘆声をさえ発せしめられるものあり。 しかもこの多岐多様繁雑を極めた建築界の有様を観じ、更に当時の世態を流れた一脈の時代思潮に思をはせて、和 様と云はれ、天竺様と云はれ、唐様と云はれ、折衷様と云はれるもの、各々の成因成長また衰滅のあとを熟視する 時、繁雑に見えてさにあらず、多岐に観じられて一路相通ずるの明快なる解決に到達すべし。

この本は、日本建築史の概説書として最初のものといってよく、その先駆的な意義が大きいとともに、建築家の目をもって、複雑極まりない中世建築界を明快に論じ去ったところに、後の概説書にも見ない秀れた点があった。ここにながながとその序文を引用したのは、今はほとんど忘れられているこの本の価値を再び認め、これから建築史を勉強しようとする人に、もう一度読んでもらいたかったからである。

太田博太郎
おおたひろたろう
[生]1912.11.5. 東京
[没]2007.1.19. 東京
建築史家，東京大学名誉教授。 1935年東京帝国大学建築学科卒業。 1943年同大学助教授，1960年東京大学教授，1974年九州芸術工科大学学長を歴任。社寺，宮殿，民家，工匠など日本建築史のあらゆる領域に及ぶ研究を展開する。著作は，『日本の建築』 (1965) ，『奈良六大寺大観』 (1969～73) のようにその時代の建築史研究を総括するもののほか，『歴史的風土の保全』 (1981) など多数に上る。法隆寺，平城宮址などの建造物保存事業にも力を入れ，また妻籠宿保存計画を指導，町並み保存の基礎を築き，1973年日本建築学会賞を受賞した。 1997年日本学士院会員。 (→日本建築 )
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

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